Write off the grid.

阿部幸大のブログ

文体を作ろう! それなりに英語は読めるのに英作文が極端に苦手なあなたへ

0.はじめに

 

このエントリは、なんとなくですが、

①大学受験の延長で勉強を続けた結果それなりの英語力はあるのに、
②読解力にくらべて作文力が極端に劣ると感じていて、
③もう少し英作文ができるようになりたい

といったあたりの、わりあい限られた読者にむけて書かれています。

 

限られているとはいえ、こういった症状と願望を持つ日本人は、かなり多いはずです。

わたしも完全にこのパターンだったのですが、留学準備の試験対策として、短期集中で勉強した結果、この状態から脱する方法が見えたように感じています。

 

いそいで注記しておけば、これは、わたしの現在の英作文力がものすごく高いという自負から書いているわけでは、まったくありません。

上記のような悩みを抱えている人が、まず最初に起こすべきブレイクスルーを、どうしたら起こせるのか。わたしが提案できると思うのは、その方法だけです。

 

その方法は、ひとことで言えば、

「文体を作る」

ということに尽きます。

以下、詳しく説明してゆきます。

 


1.なぜ英作文力がのびないか

 

大学受験の延長で英語を勉強している日本人学習者は、ほぼ例外なくリーディング能力がいちばん高いと思います。

わたしは日本の大学でアメリカ文学を専門にしている時期が7年ほどありましたが、その間、かなりの難度の英語を、かなりの量読み、卒論ならびに修論も英語で執筆したにもかかわらず、それらによって英作文力は、はっきり言って、まったく向上しませんでした。

 

世の中には読むだけで英作文もできるようになる人が一定数います。同じことをやっても、できるようになる人とならない人の差が生じる以上、これはセンスの有無だとしか言いようがありません。

なのですが、ところで、この「センス」の有無って、具体的には何を指しているんでしょうか。

わたしはこれは、

「英語ってこういう言い方する/しないよね」という基準

これを持っているか否かだと思うのです。

まさに感覚(センス)の有無です。

 

読んでもまったく英作文力が身につかない人には、英文法の正誤のほかには、自分の中に、こういった英語的な基準が、まったく無いはずです。

いわば無手勝流で、文法の知識と語彙力と辞書だけを頼りに書いている。

 

この状況を打破するのが、冒頭で述べた「文体」の獲得です。

では「文体」とは何か。

 

これは、たとえば「川端康成の文体」みたいな言い回しから連想されるような、見た瞬間に誰の文章だかわかる、独特のスタイルの獲得を目指そうというのではありません。

わたしの言いたい「文体」とは、たんに「こういうことを言いたいときは、こういう語彙と構文を使って、こんな感じで表現する」という、アウトプット時の表現のストックのことです。

言い換えれば、

脳内のアイディアから具体的な文章への変換の回路

これの構築を「文体を作る」と呼んでいます。

(ちなみに「川端康成の文体」とか言うときも、じつは同じことを意味しているのだと思います。)

 

英作文力が伸びない学習者は、この回路がほぼゼロなのだ、というのがわたしの持論であり、かつての自分をかえりみての実感です。

無手勝流から脱するには、まずこの回路を、文体を作ること、これを目指すべきなのです。

 

ただし注意したいのは、その文体は、とりあえず、ごくごく貧しいものでよい、ということです。

あとで述べるように、いちど貧しい文体を手に入れてしまえば、その細い回路に肉付けするようにして、文体を豊かにしてゆくことは、比較的容易です(以下の「3.文体を豊かにする」セクションで少し解説しています)

 

ところで、わたしが身をもって体験したように、この貧しい文体さえ、センスのない人は、いくら読んでも、いくら無手勝流で書いても、なかなか手に入らないのでした。 

では具体的にどうすればいいのか。

そういう人は、意識的に文体を作る作業が必要です。

 


2.文体を作る

 

結論から言えば、文体を作るには、あらためて一定量英文を暗唱する必要があります。

ではどんな英文を、どのくらい暗記すればいいのか?

ズバリ、旺文社の『表現のための実践ロイヤル英文法』の付録、「英作文のための暗記用例文300」を、まず覚えてみることをお薦めします。

これが優れている理由はいろいろあるのですが、とりあえず例を見てみましょう。

 

たとえば、

7番、
その小屋で眠るのは難しかった。
I found it difficult to sleep in the hut.
→ このfindの使い方に慣れること。「眠ろうとしたけれども、なかなか寝つけなかった」をfindで表すことを知っておくと便利。

88番、
私は職場に近くなるように新しいアパートに引っ越した。
I moved to a new apartment so as to be near my work.
→ 「(その結果)〜するように」は so as to がふさわしい。

こういった項目が300あります。

これらの何が良いかというと、find や so as to といった語彙や文法に属する知識を、作文時にどう応用するか、という観点から書かれている点なんです。

英語を読んでいるときに、上のような find や so as to の意味が取れない人は多くないでしょう。

けれども、文体を持っていない人は、たとえばこういった知識が、作文時に活かされていないのです。

この例文300には、

手持ちの知識を作文に動員するにはどうすればいいか

そのヒントが詰まっています。その効率がかなり高い例文が300集められているんです。

 

ただし、300覚えれば一気に変わる、と言いたいのではありません。これが最初の出発点としてはおおいに信頼できる、と言っているだけです。なんといっても300は量的には少ないです。

とはいえ、この300から得られるのは、300の知識だけでなく、「既知の知識を作文に応用する」という発想そのものの原型でもあります。

これこそ回路の発生であり、文体の生成です。

 

この300を経ると、多かれ少なかれ、書いていて「あってるっぽい」「間違ってるっぽい」という判断が、それなりに自分のなかに出てきます(貧しい文体の獲得)。

ここで大事なのは、この基準が発生すると、間違ってると思う文章を避けるようになる、ということです。

自分で使える言いまわし、つまり文体の範囲内でしか文章を書かなくなるわけですね。

すると、当然ながら、文体の範囲外のことは調べますし、文体を拡充したいという願望が発生します

 

だから、この300で勢いがついたら、すぐほかの教材に進んでみるべきです

おそらくそのとき、300学習以前のような感覚で英文を眺めることはなくなっているはずです。

自分にとって有益か否か、つまり、例文が、自分の文体を豊かにするか、回路を太くするか、そういった判断力が生まれてくるわけです。目が肥えるというか。

 

この動きがいったん始まってしまえば、文体を豊かにする作業はかなりスムーズに進みます。

とにかく大変なのは最初です。動摩擦力より静止摩擦力のほうが大きいのと同じです。

 

まずは貧しい文体を作ること。

そしてそれを作るには「暗記用例文300」が有効。

これが本エントリの主張です。

 

 
左:書籍版 右:Kindle

 

以下のツイートに、例文300の序文の写真が貼ってあるのでぜひご覧ください。良いことが書いてあります。

 

 

3.文体を豊かにする

 

いちど貧しい文体を手に入れてしまえば、あとから肉付けするのは意外に簡単。このことは、すくなくともモデルとしては理解してもらえたと思います。

なので、あとは用途によって、それぞれの方法を模索していただければと思います。

以下では、わたしが実践した方法をいくつか列挙しておきます。

(ちなみにわたしは文学部の博士課程に在籍する者で、最終目的は英語論文の執筆です。)

 

1)300の延長

わたしは300が最初の暗記教材ではなくて、この前にも後にも、色々と他の教材を試していました。

そのとき使ったのは、おもに大学受験参考書で、「英作文」ではなく「構文」という名前のついたジャンルのものが多かったです。

これもまた目的によって使い分けるべきだと思いますが、上述したように、300で勢いがついたら、もう10000くらい覚えるつもりで、行けるところまで行くべきです。

また別の機会にあらためて数百の例文を覚えようとするのは腰が重いからです。

じつはこのときわたしはTOEFL対策として同時にスピーキングのトレーニングもしていて、それもまたライティング力の増強にかなり役立ったのですが、それは別エントリでそのうち紹介できたらと思います。


2)ふだんの読書で使いたいフレーズをストックする

文体の習得の前後で、英文の見え方というのはかなり変わります

文体とは「英語ってこういう言い方するよね/しないよね」という感覚の有無だったわけですから、文体を手に入れると、読んでいて、「へえ、こんな言い方するんだ」という感覚が生まれるからです。

つまり、自分の文体に含まれていない表現が目につくようになるわけですね。日本語でもよくあることです。

わたしはそのような表現をPCのノートに書き写し、私家版のコーパスを作っています。

暗唱してしまうこともあれば、作文時に検索して使うこともあります。

ちょっと羅列してみましょう(ちょっとカタいのばっかりですが)――

 

i) 転換
How are we to understand A? (ではAをどう理解したらいいのか?)
I return now, to the question of . . . (では~という問題に戻ろう)
I must hasten to add that . . .(いそいで付け加えておかねばならないが、)
It might be useful at the outset to say a word about . . .(はじめに~についてひとこと言っておくのは有益であろう)
What interests us for the moment is . . .(さしあたりわれわれの興味を引くのは、)

ii) 批判
We today are more likely to suspect that . . . (われわれはこんにち以下のように考えてしまいがちだ)
It is too simplistic to claim that . . . (~という主張は単純にすぎる)
No wonder most critics dismissed this as . . . (多くの批評家がこれを~と評したのも無理はない)
This conception is open to criticism at several points. It assumes that . . .(この概念はいくつかの点において批判が可能である。まずこれは~ということを想定しており、)
Nothing is explained by saying that . . . (~と言ったところで何も説明されたことにはならない)

iii) 主張
This has to be borne in mind . . . (~ということを肝に銘じねばならない)
One can sum up this point by saying that . . . (この点は次のように要約できる)
A distinction needs to be made between A and B(AとBは区別されねばならない)
The capital fact suffices to show A(この重大な事実をもってAを示すに十分である)

 

こういうのです。転換とか批判とかいった項目分けは、ご覧のとおりテキトーで、現在模索中です。

わたしの目標は文学研究のアカデミックな文章を書くことなので、こういうタイプの文体と収集の方法になっていますが、これもやはり、目的によっていろいろ異なるでしょう。

ビジネスでメールすることが多い人だったらメール用のテンプレをこうしてストックしていけばいいわけです。

 

3)英文法の総復習

英文法もまた、文体の習得の前後で、まったく見え方が変わってきます。

たとえばさっきの so as to は不定詞という項目に属するわけですが、これも「so as to は〜するようにと訳す」と覚えるのではなく、「〜するように、って言いたい時は so as to が使えるのか」という発想に変化します。

わたしが蒙を啓かれた項目で、とくに印象に残っているのは、分詞構文の使い方でした。

分詞構文の作りかたは当然マスターしていましたが、自分で作文していて「ここは分詞構文でしょ!」と思うタイミングは、かつては皆無でした(Judging from なんちゃら、といった独立分詞構文は使えましたが)。

こういうのがいちど発見されると、しばらくやたらと分詞構文を使う時期がつづきます。笑

ともあれ、文体習得後に英文法を総復習すると、自分が作文時にどの文法事項を使って「いない」のか、はっきりとわかります

ちなみに、この総復習の作業にも、すでに挙げた『実践ロイヤル英文法』がオススメです。この本ホントにすごいんですよ。

 


以上、ざっとこんなところです。(旺文社さんお金ください)

 

今後、

1)ライティング+スピーキング同時対策としてのショートサーキット化
2)前置詞学習について

の2本を予定しています。こちらもご贔屓に。

 

来週も〜?恋にドロップドロップ〜♡